東京はようやくソメイヨシノの開花宣言でしたが、
足元を見れば、水仙や雀花、芽吹き始めた草花たちが、
一足先に景色を染めていました。
青果売り場も、彩りを増しています。
売り場のどこかに、小さな白い蕾をつけたブーケがありませんか?
もし見つけたら、それはきっと「花わさび」
ワサビは数少ない日本原産の野菜。
清らかな水の流れる沢には自生もしていて、
その小さな根ワサビは透明な辛味が秀逸。
まあ、滅多にお目にかかることはできませんが・・・・・
さて、花わさび。
花わさびの辛味は儚く、そして凛々しく、芽吹き始めた春そのもの。
材料 花わさび(静岡県産)1把*正味130g
だし汁150ml 薄口しょうゆ小さじ2 みりん小さじ1 塩少々
花に対して最初にするのは水きり。
茎の端を少し切って水に放ち、葉の端々までいきいきと蘇らせます。
その間に、薄く味を調えただし汁を用意し、冷やしておきます。
花わさびは、ざくざく刻むのではなく、
花や葉を軸につけた状態で3~4㎝長さに切り分けます。
ざるに広げ、やかん一杯の熱湯をぐるぐるとまんべんなく、
3回しほど全体に回しかけます。
ざっと水で冷まし、汁気を軽く絞って容器に入れ、
用意しただし汁を注ぎ、花わさびが浸った状態にします。
だし汁の表面にラップを張り付け、蓋をして冷蔵庫へ。
3時間ほどおくと辛味が最大に引き出され、
涙がにじく、花わさびの出し浸しが出来上がます。
ただ、ワサビの辛味は揮発性なので、食べるたび、
表面にラップを張り付け、蓋をすることをお忘れなく。
面白いもので、保存には難しい薄味のだし汁なのですが、
花ワサビがはいるとなぜか痛まない。1週間ほど澄んだ汁を保ってくれます。
弁当の保存用シートにも使われる、ワサビオールという成分の力かもしれません。
下ごしらえしたワサビを軽くもんで、醤油をまぶし、清潔な瓶にぎゅっ、ギュッと詰め、
蓋をして冷蔵庫で2時間ほど置くと、花ワサビの醤油漬けの出来上がり。
つんと鼻を抜ける辛味に、涙がじんわり・・・・・
こちらも食べた後できるだけギュッと押し込んで、表面をラップで覆い、蓋をして保存します。
花の時は、愛おしく、それゆえ、とても短いものです。
花の時期に出会えたのたら、是非、愛しみ、料理し、食卓へも春を運んでみませんか?
早春は、菜の花をはじめとしたアブラナ科の緑野菜が旬。
今回は、そんなアブラナ科の比較的新しい仲間
「プチヴェール」
芽キャベツとケールの配合種で、濃い緑が美しい小さな野菜。
芽キャベツと同様、脇芽として育ち、
ケールのようにプリーツの美しい葉は結球しません。
市場に出回り始めて25年ほどたち、
すでに新顔野菜とは言えませんが、
おなじみ野菜というまでには、
いま一歩といった認知度でしょうか。
旬の季節は長く、秋から早春まで。
関東では、岩手県産、静岡県産が多く並びます。
アブラナ科野菜はほろ苦さが特徴ですが、苦みはほとんどなく、甘みを強く感じます。
結球せず、しなやかな厚みの葉がひろがっているので、
大きく見えますが、さほどでもなく、加熱時間は短め。
調理法は、普通の青菜同様、炒めもの、煮物、揚げ物、何でもござれ。
私の好みを言えば、塩茹でで、サラダやお浸しでいただくのがおすすめ。
茹で加減は好みですが、しなやかな葉の歯ごたえを堪能するなら1~2分ほど。
数株ずつパックされて販売されることがほどんとですが、
旬の終わりを迎えるころは、パック中の一株の大きさがまちまちなことが多く、
大きなものは、茹でる前に、根元に十字の切り目を入れるか、
半分に裂くなどの下ごしらえをすると、ゆでがありにムラができません。
マヨネーズやドレッシング、割り醤油、辛子醤油など、お好みの味つけでどうぞ。
肉の濃厚さとも相性がよいので、あしらいに添えれば、華やかな一皿になります。
旬の終わりを迎え、気温が上がると、
アブラナ科の野菜たちは花芽をつけます。
プチヴェールもそっと葉を広げれば、
小さな黄色の蕾が見つかるはず。
そして旬の終わりには、
その花芽を育てたナバナが店頭に並びます。
こちらは出回る量が少なく、時期も短いので、
見かけることは少ないかもしれません。
出会うことがあったら、花の形を崩さないよう、さっとゆでてどうぞ。
しなやかな茎と葉は甘く、優しいほろ苦さの花穂が食卓に春を運んでくれますよ。